『中國語——日中のかけ橋·準中級』編 編集について

この本は、北京大学対外漢語教育学院と立命館大学孔子学院が共同して編集した日本人学習者向けの国別教材『中國語——日中のかけ橋』シリーズ6冊の、準中級部分であり、上·下冊、各冊12課、あわせて24課あります。中級のやや低い部分(新HSKのレベルではほぼ3級に相当)の日本人学習者に使用してもらうことを想定しています。

このレベルの学習者の特徴を考え、私たちはこの2冊の教材の編集方針と目的を以下のように設定しました。シーン別会話とコミュニケーション機能を軸に編集し、学習者の具体的状況とレベルに配慮しました。また、母語環境下にあるものと目標言語環境下にあるものという異なった環境にある学習者の双方を想定し、シーンのリアリティと実用性を重視するために、準中級は、上·下冊とも中国を設定シーンとして多く取り入れました。あわせて、できるだけコミュニケーション機能をシーンの中に表現するように努力し、初級段階で学習していない文法項目を補うことに努めました。本文はすべて対話体に記述体を加えた形式とし、自然で、負担にならない、楽しい、学習者の興味をかきたてる内容となるようにしました。練習の編集においては、さまざまな形式でリスニングとスピーキングを強化することに意を注ぎ、日本語を母語とする学習者向けの教材としての特長が実現するように努めました。学習者が準中級を学び終われば、語彙量は1600前後、単独で中国で生活することができ、中国語で簡単な日常的コミュニケーションができるようになります。

本教材の特長は、課毎の構造的配置、各部分の内容構成に意を用いたこと、「文化点描」の3つの面に表れています。

まず、構造的配置について。この2冊の教材を編集するに当たって、私たち編者は、1課ごとの構造的配置に細心の注意を払いました。各課ごとに3つの小サイクルを配置し、第一のサイクルは、「その課の語彙」+「本文Ⅰ(対話体)」+「本文ピンイン」+「本文リスニングと会話練習」+「文法のポイントおよび練習」、第2のサイクルは「本文Ⅱ(記述体本文)」+「本文Ⅱピンイン」+「本文Ⅱ練習」、第3のサイクルが、総合練習であり、補充読解文としての「文化点描」です。この3つのサイクルは、単純な反復ではなくそれぞれ重点と目的があります。第一のサイクルでは単語と対話体の本文を学び、インプットした後で、日本人学習者の弱点を補うために、重点的にヒアリングとスピーキングの訓練を行ない、さらに文法ポイントの説明や練習を通して、学生が基本的な文法知識をマスターすることをサポートします。第二のサイクルでは、「本文Ⅰ」の対話体を記述体に書き換え、第一の部分の単語や文法のポイントをもう一度提示しました。これは、学生が復習し、記憶を確かなものにすることをサポートするためです。同時に、初級で学習した基礎の上に、一定の長さの文章で表現する能力を訓練するためであり、中級段階のパラグラフ表現とスムーズに連結させるためでもあります。第二のサイクルの練習部分では、継続して、リスニングと会話能力の訓練を主としましたが、同時に「成語を並び替えて文を作る」ことで学生の語感を検証・養成することを企図しています。第三のサイクルは「総合練習」です。この部分をデザインした主な目的はその課の新出単語を総復習することにあり、あわせて、「クラス活動」でもう一度リスニングと会話能力の訓練を実際のコミュニケーションプロセスの中に位置づけ、同時にクラスを生き生きとする役割を果たすことを期待しています。この三つのサイクルは、基本的に実際の授業の進行に応じて配置していますが、教員が教材の進度に応じて、直接コントロールしてもかまいません。

この教材の第二の特長は課毎の各部分の内容構成に意を用いて配置したことに具体的に表しています。

第一のサイクルでは、私たちはコミュニケーション機能とシーンをしっかりと結びつけ、この基準から、上・下二冊の話題を構想し、できうるかぎりこの24課に含まれるシーンとコミュニケーション機能に実用性が備わるように工夫しました。テキストの本文内容を編集し書く上で、私たちは実際に役に立つという原則を堅持し、同時に楽しさを欠くべからざる重要な要素と考え、学生に「読ませる」だけでなく「読みたい」ものとなるよう努めました。学生が学習する便宜のため、本文にはピンインを配置しましたが、ピンインと文字とを同一ページには組まなかったのは、学生がピンインに過剰に依存しないようにするためであり、徐々にピンインがない状況の下で漢字を読めるようになり、中級部分の学習の十分な準備を行えるようにするためです。正確な理解は文法学習の基礎です。文法ポイントの説明には、日本語の翻訳をつけ、文法ポイントごとに、異なった形式の練習を置きました。学生に学びながら練習させ、しかもそのたびごとに新鮮な感覚を持ち、学習していく中で、十分な達成感を得て、学習への興味とモチベーションを高められるようにするためです。

第二のサイクルでは、対話体の本文を記述体に書き換え、練習で学生が反復してしっかりと聞き、短文の内容を自分の言葉に置き換えて話す形式にデザインしました。日本人学生の弱点であるリスニングと会話能力の訓練に的を絞った強化を継続して行い、学生の発声する時間を効果的に延ばし、学生の語感をよりいっそう養成しようと試みました。

語句の練習については、前の二つのサイクルでは「軽視」しているように見えます。このため、第三のサイクルで、「語句練習」と「クラス活動」の二つのセクションをデザインしました。「語句練習」は、「単語の並べ替え」「単語の組み合わせ」「空欄補充」「問答のやり取り」など多彩なスタイルで、前の二つのサイクルでのリスニングと会話練習を重視し語句練習を軽視した「不十分さ」を補いました。そして、「クラス活動」はその課全体の語句、文法ポイントのバーチャルシーンでの大訓練であり、このセクションのデザインは、もう一度シーンとコミュニケーション機能の結合という原則に戻って、課毎のクラス活動は、具体的で、リアリティをもったシーンをデザインし、コミュニケーション機能の点で、学生にリアリティをもったシーンでその課で学んだ重要語彙や構文を復習させ、活用させるというはっきりした要求を提起しています。

言語と文化はこれまでずっと密接不可分なものでした。このため、課毎の最後に「文化点描」というセクターを置きました。内容の選択は、本文の内容と緊密に結びあったものである上に、この基礎を展開・発展させ、しかも後ろに「関連語句のヒント」と「ちょっと考えて話してみよう」という2つのセクションを並べることで、教員や学生がこの部分の内容を読み終わった後で「すべきことがある」状態にさせ、同時に語彙量を増やし、学生の知識を豊かに広げ、中国に対する理解を深める役割を果たすようにしました。これが、本教材の第三の特徴と言えます。

準中級教材の以上のデザイン構想と特長を考慮すると、私たちは教育方法に対して以下のような提案をしたいと思います。

一、本教材は、日本でも、中国でもどちらでも使用できます。

日本では、一コマ90分ですので、一課を学び終えるのに3コマを必要とします。毎週1コマで、どちらもすべて学び終えるのに36コマを必要とし、おおむね一学年です。二冊すべてを学び終えるのにおおよそ4学期、二学年が必要です。もし、一週に2、3コマ配置できれば、一年で二冊を学び終えることができます。

中国では、一コマ50分で、普通は二コマ連続で配置されています。一課を学び終えるのにおおよそ6コマ、三回の授業が必要です。一週6コマが配置され、つまり三回の授業ならば、1学期で1冊を学び終えることができ、一学年で二冊学び終えられます。日本人学生を主とする短期クラスや研修クラスで使用し、毎週10コマつまり5回の授業ならば、一ヵ月半前後で10課学ぶことができ、二ヶ月で一冊学び終えることができます。

もちろん、以上のことはおおよその試算に過ぎず、カリキュラムの進度は、学生の数とレベルなどに直接関係することです。教員が教室の中で状況を見ながら具体的にコントロールしてください。

二、第一のサイクルの語彙、対話体の本文と文法ポイントについては、部分部分に分けて授業を進行する、つまり語句の一部を教えたら、続けて対応する本文を教え、あわせて対応する文法ポイントをその中に交えることを提案します。こうすれば教室によいリズムを保つことができ、単調で長く、変化に乏しいという感覚を学生に感じさせないと思います。

三、その他の内容のクラス運営についての手順は、テキストの配置順序のまま行ってもらっても、学生の状況を見ながら選択的に変化させたり削ったりしてもいいと思います。例えば、語彙を学び終わった後でまず「総合練習」の中の「語句練習」を行ったりしてもよいですし、一部の練習や「文化点描」を削ったりしても結構です。

以上の提案は使用者の参考にしてください。学生の必要性と特長に基づいて生き生きとした教育的配慮をすることは、どんな教室でも守るべき大原則です。

最後に、私たちは、この場を借りて日本の立命館孔子学院から本教材の編集出版に当たって多大な支援を与えられたことに衷心より感謝します。また、北京大学出版社の指導部と言語編集室の編集者にも本教材に対して心を込めて閲読審査していただき効果的なアドバイスをいただいたことに衷心より感謝します。この日中両国の中国語教師が心血を注いだ教材が使用者に歓迎され、日本人に対する中国語教育にふさわしい役割を果たすことができれば幸いです。使用してくださった方々からの貴重な意見や提案も心から歓迎します。

主編 金舒年 絹川浩敏 池田巧

2014年仲春の折